予報開始時刻: NOW LOADING...
? 予測(30秒間隔):
00:30:00の解析値を初期値としたSCALEモデルによる30分予報
観測(30秒間隔):
埼玉マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダによる降水強度の観測値
解析(30秒間隔):
観測値とモデルの予報値を用いたデータ同化による推定値
(※以上は2km高度の反射強度(等価レーダー反射因子)を
近似式に基づき降水量に変換)
気象庁レーダー(5分間隔):
気象庁のレーダーによる反射強度に基づく降水量の全国合成図を用いた描画
アニメーション
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2019年8月25日 午前0時~1時の事例

2019年8月24日深夜から25日未明にかけては大気の状態が不安定であり、関東地方でにわか雨が発生しました。埼玉県北部では、局所的に発達した細長い領域での降水がフェーズドアレイ気象レーダにより観測されました。また、同じ時間帯の神奈川県北部から東京都にかけての広い範囲では、上空の弱い降水が観測されました。

下図左は8月25日0時30分において観測された降水強度(降水量に変換)を500m間隔の格子を用いて表しています。フェーズドアレイ気象レーダによる観測では、時間・空間的に非常に細かな降水の分布を捉えることができますが、観測機器の立地や観測手法に由来するノイズや欠測が生じることがあります。図の上側の強い降水の分布する領域では、観測が途切れているように見える部分がありますが、これは建物等の影響でこの高度でレーダの信号が届かない領域に対応します。また、図の右下側には同心円状に観測が疎である部分が見られます。このような不均一はレーダービームの空間的配置に由来しています。
下図右が、この観測データを同化して生成した同時刻の解析値です。領域全体にわたって、降水の分布は不自然に欠けた部分がなく滑らかに見えます。観測のない領域もデータ同化によって、過去の観測データと時間的推移の物理法則に基づく推定値で補われています。このように、データ同化では観測値と数値予報モデルの結果とを最適に組み合わせることで、目的とする量の領域全体の推定値を得ることができます。
8月25日 0時30分の観測値 (高度2km) 8月25日 0時30分の解析値 (高度2km)


この時刻を初期値とした0時30分~1時00分の30分予報を、実際の降水分布を表す同時刻の解析値と比較して下図に示します。
埼玉県上空の強い降水については、20分後までの予報は降水領域の形状と強さの全体的な特徴を捉えています。また、その東側に位置する小さな強い降水(①)については、初期時刻から10分間のうちに急に発達する特徴がよく再現されています。
ただし、30分後まで進むと、埼玉県上空の降水領域は現実よりもやや東にずれて弱まっています。また、その南側には現実にはない南北に細長い降水(②)が生じています。
領域南側に広がった弱い降水については、実際は同じ地域で観測され続けているが、予報では20分後以降は消えています(③)。

予報が時間とともに現実からずれる原因はさまざまです。まず、初期値の風や温度、水蒸気の場の誤差や、予報モデルの物理過程の表現の不完全性、および領域外側から流入する境界値の誤差など、数値計算に由来するものがあります。これらは、データ同化や予報モデルの高度化によって改善することができます。
それとは別に、現象そのもののカオス的な性質に基づく予報の限界もあります。すなわち、現象によっては微小な誤差が時間とともに発達し大きな予報のずれをもたらすことがあります。例えば20分後の予報において、埼玉県上空の降水の大まかな分布は現実と似ていますが、局所的に強い降水が生じる位置(④)は必ずしも正確ではありません。このようなきわめて細かい降水現象は特に初期値の誤差への鋭敏性が強く、予測が困難であると考えられています。高頻度観測のデータ同化の研究は、こうした予測の限界を改善できる可能性を探っています。
8月25日 0時30分を初期値とした0時40分、50分、1時00分の予報値 8月25日 0時40分、50分、1時00分の解析値

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