世界の降水予報(1時間間隔で72時間先まで、それ以降6時間間隔で120時間先まで毎時予報)
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RIKEN R-CCS Data assimilation research team
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雨の強さを色で示しています。 寒色系は弱い雨、暖色系は強い雨を示します。 日本の近く(北緯0度から60度、東経100度から180度)の領域については、気象業務法に基づき気象予報業務許可(許可第204号)を取得して、予測手法に関して気象予報士が事前に確認を行った上で表示しています。中米~カリブ海、サハラ砂漠、アフリカ南部などの雨の少ない地域では、 12時間先までの予測において、降水量が算出できないため、網掛けをしている地域があります。 12時間以降はすべての地域で降水量を算出しています。

世界の降水予報 GSMaP×NEXRA

データ同化研究チームでは、シミュレーションと観測データを結びつけ、気象予測に関する研究を行っています。その一つの試みとして、降水予測の高度化を目指し、降水ナウキャスト(注1)と数値天気予報(注2)という二つの異なる予測手法に基づいた降水予測システムを開発しました。さらに、この二つの予測データを統合する新たな手法を開発し、これらをリアルタイムに継続運用することで、5日後までの降水予報を行っています。

まず、従来の降水ナウキャスト手法に「データ同化」手法を取り入れ、予測精度を向上させた新しい降水ナウキャスト技術を開発しました(GSMaP理研ナウキャスト)。データ同化は、数値天気予報の要として、シミュレーションに実測データを取り込む方法です。降水ナウキャストでは、降水分布の場所ごとの移動の方向や速さ(移動ベクトル)を捉えることが重要ですが、刻々と変動する降水分布の画像データから安定した移動ベクトルを得ることが難しいという課題がありました。これに対して数値天気予報で用いられるデータ同化の方法を応用することで、移動ベクトルがより安定的に算出できるようになりました。この新しい降水ナウキャスト手法を、GSMaP(注3)の全球降水マップに適用し、2017年5月以降、12時間後までの降水予報を公開してきました。

また、数値天気予報モデルNICAM(非静力学正20面体格子大気モデル)(注4)と局所アンサンブル変換カルマンフィルタLETKF(注5)を組み合わせた「NICAM-LETKF数値天気予報システム」を新たに開発し、GSMaPデータを同化することに成功しました。このシステムでは、世界で唯一GSMaPデータを直接用いています。降水観測データを数値天気予報に用いるのは難しく、気象学における難問の一つでしたが、ガウス分布変換手法(注6)を降水データに適用することで解決しました。このNICAM-LETKF数値天気予報システムをJAXAのスーパーコンピュータ(JAXA Supercomputer System Generation 2; JSS2)によりリアルタイムで実行し、「世界の気象リアルタイムNEXRA」として公開しています。

さらに、降水ナウキャストによる12時間後までの予測データと、NICAM-LETKF数値天気予報システムによる5日後までの降水予測データの二つの異なる降水予測データを統合して、一つの高精度な降水予測データを作成する新しい手法を開発しました。この手法は、場所ごとの統計的特徴を考慮した局所最適化という独自の工夫を行うことで、予測精度を向上させました。これにより12時間後までは、降水ナウキャストと数値天気予報を統合した高精度降水予測が可能になりました。12時間後から5日後までは、降水ナウキャストの予測精度が低下するため、数値天気予報のみを用います。

(注1)降水ナウキャスト:観測データによる直近の降水分布の動きを捉え、それがそのまま持続すると仮定して、将来の降水分布を予測する手法。雨雲の発生や発達などの気象学的なメカニズムを考慮しないため、計算が単純で高速でできるが、予測時間が長くなると精度が急速に低下するという問題があります。

(注2)数値天気予報:気象学的なプロセスを考慮したシミュレーションに基づき、スーパーコンピュータを使った複雑な計算による天気予報。

(注3)GSMaP宇宙航空研究開発機構 (JAXA) により開発された、人工衛星観測に基づく世界の降水分布情報です。

(注4)数値天気予報モデルNICAM:地球全体で雲の発生・挙動を直接計算することにより、高精度の計算を実現した全球気象モデル。従来の全球気象モデルでは、高気圧・低気圧のような大規模な大気循環と雲システムの関係について、なんらかの仮定が必要とされ、不確実性の大きな要因となっていました。NICAMは主に水平解像度870 m ~14 kmの範囲で運用されており、870 m ~3.5 kmの超高解像度を用いる場合は全球雲解像モデル、7 km ~14 kmの解像度を用いる場合は全球雲システム解像モデルと呼ばれます。今回は特に、解像度112 kmで14 kmよりも10倍程度低解像度で動かしています。NICAM はNonhydrostatic ICosahedral Atmospheric Modelの略。

(注5)局所アンサンブル変換カルマンフィルタLETKF:データ同化手法の一種で、特に並列計算効率に優れた現実的な手法。メリーランド大学で初めて考案され、世界のさまざまな数値天気予報システムに実装されています。LETKFはLocal Ensemble Transform Kalman Filterの略。

(注6)ガウス分布変換手法:非ガウス分布に従う確率変数を、ガウス分布に従うように変数変換する手法。


注意事項

当ウェブサイトでは5日後までの予報を表示しています。日本の近く(北緯0度から60度、東経100度から180度)の領域については、気象業務法に基づき気象予報業務許可(許可第204号)を取得して、予測手法に関して気象予報士が事前に確認を行った上で表示しています。なお、リアルタイムのデータが得られない場合は"No Forecast"を表示します。

気象庁発表の予報と当ウェブサイトの予報は異なることがあります。気象庁から気象警報・注意報が発表されると、随時こちらに反映されますが、必ず気象庁が発表する最新の気象警報・注意報の内容をご優先ください。

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※参考文献

  1. Miyoshi, T., S. Kotsuki, K. Terasaki, S. Otsuka, G.-Y. Lien, H. Yashiro, H. Tomita, M. Satoh, and E. Kalnay, 2020: Precipitation Ensemble Data Assimilation in NWP Models. in "Satellite Precipitation Measurement", Advances in Global Change Research, Vol. 69, edited by Levizzani, V., C. Kidd, D. Kirschbaum, C. Kummerow, K. Nakamura, and F. Turk, Springer, Cham.
  2. Terasaki, K., S. Kotsuki, and T. Miyoshi, 2019: Multi-year analysis using the NICAM-LETKF data assimilation system. SOLA, 15, 41-46.
  3. Kotsuki, S., K. Terasaki, K. Kanemaru, M. Satoh, T. Kubota, and T. Miyoshi, 2019: Predictability of record-breaking rainfall in Japan in July 2018: ensemble forecast experiments with the near-real-time global atmospheric data assimilation system NEXRA. SOLA, 15A, 1-7.
  4. Kotsuki, S., K. Kurosawa, S. Otsuka, K. Terasaki, T. Miyoshi, 2019: Global precipitation forecasts by merging extrapolation-based nowcast and numerical weather prediction with locally optimized weights. Wea. Forecasting, 34, 701–714.
  5. Otsuka, S., S. Kotsuki, M. Ohhigashi, and T. Miyoshi, 2019: GSMaP RIKEN Nowcast: Global precipitation nowcasting with data assimilation. J. Meteor. Soc. Japan, 97, 1099-1117.
  6. Terasaki, K., and T. Miyoshi, 2017: Assimilating AMSU-A radiances with the NICAM-LETKF. J. Meteor. Soc. Japan, 95, 433-446.
  7. Kotsuki S., Y. Ota, and T. Miyoshi, 2017: Adaptive covariance relaxation methods for ensemble data assimilation: Experiments in the real atmosphere. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 143, 2001-2015.
  8. Kotsuki, S., T. Miyoshi, K. Terasaki, G.-Y. Lien, and E. Kalnay, 2017: Assimilating the global satellite mapping of precipitation data with the Nonhydrostatic Icosahedral Atmospheric Model (NICAM). J. Geophys. Res. Atmos., 122, 1-20.
  9. Otsuka, S., S. Kotsuki, and T. Miyoshi, 2016: Nowcasting with data assimilation: a case of Global Satellite Mapping of Precipitation. Wea. Forecasting, 31, 1409-1416.
  10. Lien, G.-Y., T. Miyoshi, and E. Kalnay, 2016: Assimilation of TRMM Multisatellite Precipitation Analysis with a low-resolution NCEP Global Forecast System. Mon. Wea. Rev., 144, 643–661.
  11. Lien, G.-Y., E. Kalnay, T. Miyoshi, and G. J. Huffman, 2016: Statistical properties of global precipitation in the NCEP GFS model and TMPA observations for data assimilation. Mon. Wea. Rev., 144, 663–679.
  12. Terasaki, K., M. Sawada, and T. Miyoshi, 2015: Local ensemble transform Kalman filter experiments with the nonhydrostatic icosahedral atmospheric model NICAM. SOLA, 11, 23-26.

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